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ドキュメンタリー/教養

情熱大陸🈑

ジャズ界に現れた“超新星”
「トランペットと生きる」覚悟の理由

9月15日 日曜 1:35 -2:05 AKT秋田テレビ1

情熱大陸🈑

24歳のトランペット奏者・松井秀太郎は、いま日本のジャズシーンで最も注目されるアーティストのひとりだ。 国立音大の附属高校でクラシックを学んだが、大学に進むとジャズを専攻、在学中にプロデビューを果たした。評価されているのは、高い演奏技術と豊かな表現力だ。 世界的なジャズピアニスト・小曽根真はこう評する。「音楽に意思がある。トランペットの放つ音から、これまでに歩んできた情景が伝わってきて、心が震えた」
全国9都市を巡る初のツアー、松井はいわゆる“姫カット”で現れた。ロングヘアをなびかせ、終始穏やかな物腰でバンドメンバーに指示を出す。披露したのは、クラシックのアレンジ1曲をのぞいて、全て本人のオリジナルだった。さらに、各公演に合わせて新曲も用意していた。しかもある日の作品は当日完成したばかり。「子守唄、鼻歌を歌ってる感じ」…それだけをメンバーに伝えると、その場で即興演奏が始まった。
松井にとってトランペットは、歌を歌う感覚に近いという。楽器は自分が作った歌を伝えるためのものであり、そこにエネルギーや魂をこめるのだと。 だが意外にも、その楽器をやめてしまおうかと悩んだ時期があると打ち明ける。中学時代、希望して転入した吹奏楽の強豪校。ある日突然通えなくなり、そのまま家に引きこもるようになったそうだ。 その頃、ジェンダーに苦しんでいた。男性らしさ女性らしさという枠に囚われたくない自分
に気づき、このまま社会でやっていけるのか、大好きな音楽を続けられるのか、この先の人生の道筋がわからなくなった。ひたすら部屋で吹き続け、たどり着いた答え…取材中、ジャズの本場ニューヨークで、初のレコーディングが行われた。バックには世界的なミュージシャンたち。松井はしかし緊張するそぶりもなく、あえて彼らにぶつけたい曲を用意していた。本人曰く、とてもシンプルなメロディーで、およそジャズとは言えない曲。
「何もない楽譜から、彼らとのセッションでどんな音やエネルギーが生まれるのか試してみたい」。 柔らかく、けれど果敢に。気鋭のトランぺッターが奏でる音色―