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ドキュメンタリー/教養

テレビ寺子屋【落語に学ぶ「粗忽者」の思考/立川談慶】

落語に学ぶ「粗忽者」の思考 
立川談慶(落語家)

7月7日 日曜 6:15 -6:45 テレビ新広島1

テレビ寺子屋【落語に学ぶ「粗忽者」の思考/立川談慶】

「粗忽者(そこつもの)」は、いまではあまり使いませんが、ドジでおっちょこちょいというダメな人を表す言葉です。現代社会では一生懸命努力して、人よりいっぱい稼いで、いい社会生活を営みなさいという暗黙のプレッシャーがかかりますが、落語の中の人物はおしなべて粗忽者です。出てくるのはドジでダメな人で、落語を聞くことで「ダメでもいいんじゃないかな」と思ってもらえれば、この世の中を生きやすくなると思います。
「寿限無」という落語があります。長い名前を付けられた子どもがもたらす騒動のはなしですが、ある小学校で寿限無を披露すると、5年生の女の子が「落語の登場人物はみんな優しいんですね。私のクラスに、もし寿限無くんみたいな長い名前の子が転校してきたら、私はからかったり、『変な名前だね』とちょっと意地悪なことを言ったりするかもしれない。でも、落語の世界にはそういう人は出てこないんですね」と言ったんです。
否定したりつっこみを入れて相手の行動を是正したりするよりも、まずは受け入れてしまったらどうか。相手を受け入れたということは、自分のダメな部分も受け入れてもらいやすくなります。何が言いたいのかというと、「許容」です。ダメな人を笑いながらも、否定するどころかコミュニティの大事な構成要員として優しく受け入れている側にも注目してみると、落語の深みをさらに感じ取っていただけるのではないかと思います。