第玖話「共同戦線」
――何度、心をくじかれたとしても、立ち上がりたい。
負けたくない。いま、黙ったままでは、絶対に駄目だとわかっているから。
秋の代行者・祝月撫子の行方は依然としてしれず、時間だけが無駄に過ぎていた。
十年前の雛菊誘拐を彷彿とさせる賊の蛮行に、代行者や護衛官たちの間には動揺が走るも、具体的な解決策は導き出せていない。
幼い秋が消えたことで心を崩す雛菊。その姿を見て苦悩するさくら。
主を失った張本人である秋の代行者護衛官・阿左美竜胆は、失って初めて自らの主である祝月撫子への深い愛を自覚し、喪失感に苛まされる。
そして、愛する人を失う喪失感をすでに経験している冬の代行者・寒椿狼星は、過去から現在へと続く失意の日々を思い返した。
「この命は、雛菊にもらった命だ。雛菊に恥じない生き方をしたい」
撫子を救うため、狼星はさくらへ数年ぶりの連絡を入れる。
代行者の始まりの物語は、以下のように続く。
――冬は春を愛していた。
動物達が夫婦となり生きていくように、春を愛していた。
春もまた、運命の如く冬を愛し返した、と。
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