日本のチカラ

ドキュメンタリー/教養

日本のチカラ#402🈑 母を失ったクマ クラウド

「九州では絶滅したとされ、広島県では絶滅のおそれがある」…ツキノワグマ。西中国山地の麓にある広島市安佐動物公園に、県北の里山からやって来た一頭がいます。

10月7日 月曜 10:25 -10:55 南海放送1

幼かったこのクマは、かつて園内イチの人気もの。棒やバットを巧みに振り回しカンフー技のような仕草で来園者を楽しませました。名前はクラウド…実は悲しい過去を持つクマ。母親が駆除され、幼過ぎたため動物園に引き取られました。カンフーのような動きは寂しさを紛らわす行動…イライラするときに無意識ではじめてしまう動きでした。
安佐動物公園でクラウドの飼育を担当していた畑瀬(はたせ)淳さんは「クマが好む安心して寝られる環境を」と、その行動をやめさせました。クマのストレス軽減と寝ている本来の状況を見てほしいとの思いからです。西中国山地のクマは推定で最大2000頭。ヒトとクマの生息域の区切りは年々失われています。2024年…全国でのクマによる死傷者数は200人を超え過去最多。
住宅団地を近くに抱える安佐動物公園の敷地内にも現われるように…。ヒトとクマの衝突が今、懸念されています。畑瀬さんは行政からの委託で、希少動物の調査を長年行ってきました。クマは基本、臆病でヒトを見たら逃げ出します。そうではない個体が軋轢(あつれき)を生んでいる…危ないクマ。
再生可能エネルギーなどが注目され、開発で自然環境が変わりクマが住めない森が増加、「行くところがなく、ウロウロしている」現状。駆除と保護で揺れ動く自治体…動物園もクマを収容する余裕はありません。クマが暮らすことができる森を残すことが求められています。ヒトとクマが共に生きる自然を残す… 「むかし、広島にもツキノワグマがいた」となる前に…!